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イランイランの精油は、イランイランの花から採れます。
日本では耳慣れない名前の花ですが、その香りはエキゾチックで甘く日本でも香料として活用されており、精油だけでなく有名ブランドの香水や化粧品などにも利用されています。
イランイランの香りの一番の特徴は催淫で、性的な高揚感を高めることでも有名です。そのため原産地のインドネシアでは、新婚初夜のベッドにイランイランの花を敷き詰めるなど、官能的な雰囲気が求められる時に使用されています。
ここではイランイランとはどのような植物か?使い方の歴史、イランイランの精油の香りや特徴、作用、具体的な使い方・活用法やブレンドレシピ、使用する時の注意点・禁忌などを紹介します。
イランイランってどんな植物?
イランイランは、甘い香りを持つ大きさ約10㎝ほどの黄色いカールしたやや肉厚な花で、木にぶら下がったバナナの皮のような形をしています。風が吹いて花が揺れると、甘い香りが何mも先まで届くそうです。
イランイランの花が育つ木は本来は10~20m以上の高さとなるバンレイシ科イランイランノキ属の高木ですが、収穫を目的としている木は高さを2~3m程度に調整されています。
原産地(*)はインドネシアのモロッカ諸島と言われていますが、現在はインドネシアの他にマダガスカル、コモロ諸島などの地域にも生息しています。
*イランイランが最初に産出した土地
イランイランの名前の由来
イランイランの名前の由来はタガログ語で花の中の花を意味する「アランイラン」であると言われています。
また、アランイランにはぶら下がって咲く花、風に揺れる花という意味があり、イランイランの花の揺れる様子からその名がつけられた、という説もあります。
イランイランの歴史 聖なる木だったイランイラン
イランイランにはその香りにまつわる伝説があります。
その昔、ナガ神という神様を信仰している民族がいたのですが、神様の彫像が全て焼き払われるという事件に見舞われました。
そこで新しく彫像を彫ろうとしたのですが、適した木が見つかりません。
困った人々は神の使いとされる尾の長い鳥を放し、その鳥が舞い降りた木を、彫像を彫るための聖なる木としようと決めました。その時鳥が止まった木がイランイランであったそうです。
イランイランは花の咲く木ではなかったのですが、鳥が止まった瞬間に美しい花を咲かせ、今までに嗅いだことのない良い香りを放ちました。
人々はこれを見て、ナガ神が祝福してくれたのだと考え、イランイランを「神の祝福を受けた木」として大切にしたそうです。
イランイランの香りの使い方・活用法
イランイランの香りは様々な方法で活用されてきました。
ジャワなどイランイランの生息地では、催淫作用があるとされるイランイランの花を新婚初夜のベッドルームに敷き詰め、ロマンティックな夜を演出する習慣があったそうです。
また、スキンケアやヘアケアにも活用されていた歴史があり、ビクトリア朝時代のイギリスではマサッカルというイランイランを主原料とした整髪料が人気でした。
イランイランを使ったスキンケア製品に「ブロッサム」というボディオイルがあります。この「ブロッサム」は人気オーガニックコスメブランドのSHIGETAで発売されている製品ですが、このオイルを使うとモテる!と口コミが広がり、モテオイル、婚活オイルと呼ばれ話題になりました。
また、香料として人気が高く、香水にも使われています。イランイランを使った香水で代表的なものに「シャネルNo.5」があります。
イランイランの精油の特徴
イランイランノキ属の木の花から採れる二つの精油
イランイランの精油はバンレイシ科イランイランノキ属の木であるイランイランの木に育つ花から採れます。
イランイランノキ属にはgenuina(ジェニュイン)種と、macrophylla(マクロフィラ)種という2種類の木があり、genuina(ジェニュイン)種からはイランイラン、macrophylla(マクロフィラ)種からはカナンガという精油が採れます。この二つの精油は同じイランイランノキ属の木から採れるため、似た特徴を持っています。
すなわち、イランイランは薄い黄色の精油で甘い花の香りを持っていますが、カナンガは色味が濃く粘り気のある精油で、甘さはありますが、少し油っぽいような香りがします。
そのため精油の品質は、イランイランのほうが良いとされており、イランイランは香水や化粧品、アロマセラピーなどに使用されますが、カナンガは主に石鹸など加工品の香料として使用されています。
イランイランの精油の価格は10mlで4,000円から5,000円程度です。これはエクストラの価格になりますので、コンプリートになるともう少し値段が下がりますが、精油としては少し高価な部類に入ります。
ただし、イランイランと香りが似ているジャスミンはさらに高価で、2mlで5,000円程度しますので、イランイランは「貧乏人のジャスミン」と呼ばれたりもします。
イランイラン精油の抽出法
イランイランの精油はイランイランの花から抽出されますが、品質の良い香り成分をたくさん抽出するために、花の収穫は香りが最も強くなる夜明け前から早朝にかけて行われます。
収穫された花は、水蒸気蒸留法という方法でおよそ一日かけて抽出されます。
これは、水蒸気蒸留法では大きな釜に植物を入れて精油を抽出しますが、イランイランの花はデリケートで、釜の中に一度にたくさんの花を入れると、下の方にある花が上にある花の重みにより傷んでしまうことがあるため、小さな釜で少しずつ精油を抽出するためです。
イランイランのグレード
イランイランの精油は抽出時間により成分が異なり、「イランイランエクストラ」「イランイランファースト」「イランイランセカンド」「イランイランサード」「イランイランコンプリート」「イランイランエクストラスーペリア」の6つのグレードに分けられています。
ただ時間の区切りに、統一された決まりはなく、蒸留所の職人の判断によって分けられているため、時間や成分については文献によって違いがあります。
なおアロマセラピーでは、エクストラ以外を使うことはほとんどありません。
・イランイランエクストラ
イランイランエクストラは、蒸留開始後1時間半~2時間くらいをかけて抽出される一番搾りの精油です。イランイランの甘い香りに重要なエステル類の酢酸ベンジルや安息香酸メチル、またアルコール類のリナロールなどの成分を多く含んでいます。
6つのグレードの中で最も甘く良い香りを持っています。
・イランイランファースト
イランイランファーストはエクストラ抽出後~1時間くらいの間に抽出される精油です。イランイランファーストにも酢酸ベンジルや安息香酸メチル、リナロールといった成分は多く含まれています。
香りはエクストラに劣りますが、甘く良い香りが楽しめます。
イランイランファーストは市場での流通は少ないですが、エクストラに近い香りを持ち、エクストラよりも安いため人気の高いグレードです。
・イランイランセカンド
イランイランセカンドはファースト抽出後~6時間くらいの間に抽出される精油です。
イランイランセカンドからは成分が大きく変わります。
甘い香りの成分であるエステル類が大幅に減り、代わりに落ち着いた香りの成分であるセスキテルペンが大半を占めるようになってきます。そのため、イランイランセカンドは甘みが少なく、落ち着きのある香りになります。
甘い香りが苦手な方は、エクストラよりもイランイランセカンドの香りの方が受け入れやすいかもしれません。
イランイランセカンドも市場への流通が少ないグレードです。
・イランイランサード
イランイランサードはセカンド抽出後から蒸留終了までの間に抽出される精油です。成分の大半がセスキテルペンになります。
精油に粘り気がでて少し油っぽい香りになりますが、強い甘さがなくなるため、他の精油と合わせやすくなります。
イランイランサードも市場への流通が少ないグレードです。
・イランイランコンプリート
イランイランコンプリートは、エクストラからサード全ての段階の精油を混ぜ合わせたものです。特にグレードの表記がなく販売されているものは、コンプリートであることが多いです。
イランイランコンプリートはエクストラに含まれる成分も持っていますが、セカンド、サードの成分も含まれるため甘みの少ない落ち着きのある香りです。
香料としてはエクストラが重宝されますが、コンプリートには「イランイランのすべての成分が含まれる」ということで、アロマセラピーではコンプリートを好んで使う人も多くいます。
イランイランコンプリートは、多くのメーカーで取り扱いがあるため流通量が多く安価なため、購入しやすいグレードです。
・イランイランエクストラスーペリア
イランイランの精油にはエクストラよりもさらに上の品質のエクストラスーペリアと呼ばれるグレードがあります。
イランイランエクストラスーペリアは、選別されたより品質の良いイランイランの花を使い、卓越した高度な技術を持つ職人によってだけ抽出された精油です。
他のイランイランのグレードとは一線を画す大変高級な精油とされ、市場でもなかなか見かけることがありません。
イランイラン精油の香りの特徴
イランイランエクストラの香りの特徴は、ジャスミンの香りに似たどこかエキゾチックで、アジアのリゾート地を思わせるような濃厚な甘さです。
そのため、甘さが強すぎで苦手だ、という方もいらっしゃいます。そういった方はエクストラよりもコンプリートの方が心地よく感じることもあります。
イランイラン精油の香料・原料データ
英名 | ylangylang イランイラン |
和名 | イランイランノキ |
学名 | Cananga odorata |
別名 | パフュームツリー |
科名 | バンレイシ科 |
産地 | マダガスカル、インドネシア、コモロ諸島、フィリピンなど |
精油の抽出部位 | 花 |
ノート * | ミドル〜ベース |
精油の主な成分 | 酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、リナロール、β-カリオフィレン、パラクレゾールメチルエーテルなど |
ブレンド相性 | オレンジ、レモンなどの柑橘系や、サンダルウッド、パチュリーなどのエキゾチック系と相性がよいです。少し苦みのある香りとも相性がいいです。 |
*ノートは精油の揮発する時間や香りの持続する時間を表すものです。香り立ちが最も早いが持続時間が短いトップノート、香り立ちはゆっくりだが長い時間香り続けるベースノート、ちょうど中間の性質を持つミドルノートの3つに分類されます。
イランイランの活用法
イランイランの精油だけでも香りを楽しめますが、他の精油を加えることで、香りを変化させることもできます。柑橘系の精油と合わせると、甘さが緩和され、親しみやすい香りになります。
ブレンドにおすすめの精油も併せて紹介していますので、基本のレシピに足して使ってください。
なおイランイランは、香りが強いため、ブレンドをする時に他の精油の香りを消してしまうことがあります。ブレンドする際は香りのバランスを見ながら少量ずつ加えましょう。
またレシピを活用する際は、イランイランの使用時の注意事項、ブレンドとして加える精油の使用時の注意事項の両方を確認してください。
精油の成分に対する体の反応には個人差があります。気分不快を感じたり、肌に合わないと感じた場合は使用を中止してください。
入浴剤
イランイランの甘い香りで気分をリフレッシュします。
バスソルト30gを浴槽に入れてよく混ぜてから入浴してください。熱いお湯や長湯はかえって眠りにくくなりますので、40度くらいのお湯に15分程度浸ってください。
敏感肌の方はこのレシピの量を2~3回に分けてください。
【レシピ】
天然塩・・・30g
イランイラン・・・2滴
ボウルなどに天然塩と精油のイランイランを入れてよく混ぜます。何回かに分けて使いたい場合は、蓋のある容器に残ったバスソルトを入れて、風通しがよく、直射日光の当たらない涼しい場所に保管してください。なるべく早めに使い切ってください。
【おすすめのブレンド】
スイート・マージョラム・・・4滴
スイート・マージョラムは香りで心が穏やかになる精油です。
ただし、スイート・マージョラムは妊娠中、授乳中の方や月経量が多い方は控えたほうがいい精油です。該当する方はスイート・マージョラムを加えないレシピでお楽しみください。
ロマンティックな夜のベッドサイドに
官能的な甘い香りでロマンティックな夜を演出します。
【レシピ】
イランイラン・・・2滴
精油を垂らしたコットンをベッドサイドに置き香りを拡散させます。
【おすすめのブレンド】
サンダルウッド・・・1滴
サンダルウッドは催淫作用を持つ精油です。サンダルウッドは別名を白檀といい、お香のような香りを持っています。お香の香りがイランイランの香りをよりエキゾチックに官能的に仕上げます。
イランイランの禁忌・注意点
・低血圧の方
低血圧の方は、イランイランの香りを嗅ぐことで、血圧が下がり気分が悪くなることがあります。体調不良を感じた場合は、使用を中止してください。
・敏感肌の方
敏感肌の方は刺激を感じることがあります。低めの濃度で使用し、不快感がある場合は直ちに使用を中止してください。
・集中したい作業がある時
イランイランはリラックスに向いた精油ですので、集中したい時には使用を控えてください。
・室内で使いたい時
香りが強いため長時間高濃度で使用していると、頭痛や吐き気を感じることがあります。適宜換気するなどして使ってください。
・外で使いたい時
イランイランには酢酸ベンジルはという成分が含まれています。この成分は特定の種類の蜂の雄を惹きつけます。蜂のいるシーズンに外で使う時は気を付けて使ってください。