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シスタスは濃厚な甘い香りを持つ樹脂のような液体を分泌する植物です。
その分泌物は紀元前3世紀ころにはすでに香料として活用されていたと考えられており、最古の天然香料と呼ばれています。
現在はその分泌物から精油が作られ、主に香料や香水の香りを長持ちさせる保留剤として活用されていますが、海外では傷を治す作用があるとして、床ずれや潰瘍の治療を目的としても活用されています。
ここではシスタスとはどのような植物か?シスタスの精油の香りや特徴、使い方・活用法や、使用する時の注意点などについて紹介します。
シスタスってどんな植物?
シスタスは地中海原産のハンニチバナ科の植物で、乾燥した地中海性気候の岩場などに自生している樹高2~3m程度の常緑低木です。
花は白く、花びらは五枚で丸みのある形をし、5月から7月にかけて、晴れた日の昼間だけ4~8cmの花を咲かせます。
葉は濃い緑色で、細長く、先端は尖った形をし、表面は少しべたべたしています。
葉に揮発性の高い油分を多く含んでおり、気温が高くなるとこの油分が自然発火し山火事の原因となることがあります。
シスタスの名前の由来
シスタスという名前は、ギリシャ語でハンニチバナ科の植物を意味する「kistos(キスツス)」が由来になっていると言われています。
シスタスの分布
シスタスは地中海沿岸地域や中東地域に分布しています。
シスタスの育て方、栽培方法
シスタスは野生植物で、一般的に家庭で栽培されていませんが、同じハンニチバナ科である近縁種のシスタス インカヌス、シスタス パープレウスなどは園芸種として流通しています。
日本でも園芸種を入手することができますが、シスタスは高温多湿に弱いため日本の気候は栽培に適しておらず、栽培が難しく夏には枯れてしまうことが多いです。
シスタス インカヌスなど近縁種の苗を育てる際は、庭植えでは湿度の管理が難しいので、鉢植えにし、水はけのよい土を使う、風通しの良い場所に置く、水やりを控えめにするなどの配慮が必要です。
シスタスの使い方、活用法の歴史
シスタスの樹脂状の分泌液は最古の天然香料と言われ、紀元前3世紀頃の古代エジプトでは動物性の油脂と合わせて作った軟膏を香水代わりにしたり、宗教儀式で使うお香として活用していたと言われています。
シスタスはエジプト地域では採れないため、ギリシャのクレタ島から輸入していたと考えられています。
また、シスタスは古代ローマでも香料として活用されていました。
聖書にフランキンセンス、ミルラ、ガルバナム、オニチャ(シスタス)からお香が作られた、と記されていることから、キリストが生きていた時代とされる紀元前元年頃の古代ローマ時代には香料として存在していたと考えられています。
中世ヨーロッパになるとシスタスの樹脂状の分泌液は香料としてだけではなく、傷の治りを早める癒傷作用があるとして傷や潰瘍を治す薬としても使われるようになりました(フランスでは現在もシスタスの精油を傷や潰瘍を治療する目的で使用しています)。
現在は、シスタスの樹脂状の分泌液は主に香料や香水の香りを長持ちさせる保留剤として活用され、また、シスタスの香りは、マッコウクジラの不消化物が固まってできた竜涎香(リュウゼンコウ)という希少な香料に似ているため、竜涎香の代用品としても活用されています。
シスタス精油の特徴
シスタス精油の抽出方法
シスタスは枝や葉を煮出して採取した樹脂状の分泌液を水蒸気蒸留で抽出したものと、有機溶剤を使い有機溶剤抽出法で抽出したものがあり、有機溶剤抽出したものはシスタス アブソリュートと呼ばれます。
どちらの精油も濃厚な甘い香りで、濃いオレンジ色をしています。
シスタス精油の香りの特徴
シスタスの精油はとても香りが強く、他の精油と合わせて使う時は量を控え目にしないと、他の香りを打ち消してしまいます。
シスタスの香料・原料データ
英名 | Cistus |
和名 | 午時葵(ごじあおい) |
学名 | Cistus ladaniferus(キストゥス ラダニフェルス) |
別名 | ラブダナム、ロックローズ、シストローズ、オニチャ |
科名 | ハンニチバナ科 |
産地 | スペイン、フランスなど |
精油の抽出部位 | 枝、葉 |
精油の主な成分 | α-ピネン、β-ピネン、酢酸ボルニル、ゲラニオール、リナロールなど |
ノート * | ベース |
精油の使用方法 | 芳香浴に使用可。植物油で希釈して顔や体に塗布可。 |
*ノートは精油の揮発する時間や香りの持続する時間を表すものです。香り立ちが最も早く持続時間は短いトップノート、香り立ちはゆっくりだが長い時間香り続けるベースノート、ちょうど中間の性質を持つミドルノートの3つに分類されます。
精油シスタスの活用法
シスタスだけでも香りを楽しめますが、他の精油を加えることでより香りが豊かになります。ブレンドにおすすめの精油も併せて紹介していますので、基本のレシピに足して使ってください。
またレシピを活用する際は、シスタスの使用時の注意事項、ブレンドとして加える精油の使用時の注意事項のいずれかに該当する項目がないかどうか確認してください。
精油の成分に対する体の反応には個人差があります。気分不快を感じた場合は使用を中止してください。
芳香浴
精油の香りを室内に拡散させ香りを楽しむ方法です。
【レシピ】
シスタス・・・1滴
コットンに精油のシスタスを垂らす、もしくはアロマデフューザーを使って香りを拡散させます。アロマデフューザーを使う場合はそれぞれの取り扱い説明書の内容に沿って使用してください。
【おすすめのブレンド】
クラリセージ・・・2滴
クラリセージは女性ホルモンの分泌に影響を与える可能性があるとされています。女性ホルモンが影響を与える子宮筋腫などの疾患を持っている方は使用を控えてください。
また通経作用があるとされていますので、妊娠中の方は使用を控えてください。
ルームスプレー
空間にスプレーすることで、速やかに香りを拡散させ香りを楽しむ方法です。スプレーを使う時はその都度、瓶をよく振ってから使用してください。芳香成分を空気中に拡散することを目的にしていますので、肌につけるには少し濃い濃度となっています。スプレーは肌にはつけないようにしてください。
【レシピ】
精製水・・・8ml
無水エタノール・・・12ml
シスタス・・・1滴
無水エタノールに精油のシスタスを混ぜ、その後精製水を加えてよく混ぜます。混ぜ合わせた液体をスプレー式の遮光瓶に入れて使用してください。遮光瓶は風通しがよく、直射日光の当たらない涼しい場所に保管し、スプレーは2週間程度で使い切ってください。
【おすすめのブレンド】
マンダリン・・・7滴
マンダリンは使用上の禁忌事項は特にありません。
シスタスの禁忌・注意点
・妊娠中の方
シスタスの精油は通経作用があるとされていますので妊娠中の方は使用を控えてください。