精油の作り方抽出法.超臨界流体抽出法(超臨界炭酸ガス抽出(超臨界CO₂抽出))

アロマ精油・エッセンシャルオイル

超臨界流体抽出法は、近年特に注目されている高品質な芳香成分の抽出技術であり、従来の水蒸気蒸留法や溶剤抽出法では得られなかった成分を取り出せる点で革新的な方法です。なかでも、二酸化炭素(CO₂)を用いた超臨界炭酸ガス抽出は、安全性・純度・香りの再現性に優れており、精油産業だけでなく、食品・医薬品・香料産業など幅広い分野で利用が進んでいます。

二酸化炭素は、31.1℃・7.38MPa(約73気圧)という比較的低い条件で「超臨界状態」と呼ばれる特別な状態になります。この状態のCO₂は、気体のような浸透性と液体のような溶解力を併せ持ち、植物内部に入り込んで芳香成分を効率よく溶かし出すことができます。しかも、抽出後に圧力を下げるだけでCO₂は完全に気化して消えるため、溶剤残留がゼロという高い安全性を実現します。

この方法は、熱を加える水蒸気蒸留法とは異なり、熱に弱い繊細な芳香分子を壊さずに抽出できるという大きな利点があります。また、溶剤抽出法のように有機溶剤を使用しないため、残留溶剤のリスクがなく、食品や医薬品にも応用できるほどの高い純度を保つことができます。

さらに、超臨界流体抽出法は、従来の方法では抽出が難しかった比較的分子量の大きい成分や不揮発性成分まで取り出すことができ、植物本来の香りにより近い複雑で奥行きのある香質を再現できる点でも優れています。こうして得られた抽出物は「CO₂エキストラクト」と呼ばれ、精油よりも植物の香りに忠実であると評価されることもあります。

一方で、超臨界流体抽出法は高度な設備と高圧技術を必要とし、1回あたりの抽出量も限られるため、コストが高く、一般的な精油よりも高価になる傾向があります。しかし、その品質の高さから、近年は高級香料や自然派化粧品の分野で需要が高まっています。

ここでは、精油づくりに用いられる超臨界流体抽出法(超臨界炭酸ガス抽出(超臨界CO₂抽出))の特徴や仕組みをわかりやすく解説します。

 

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超臨界流体とは

物質は、一定の温度と圧力を超えると、気体と液体の中間の性質を持つ「超臨界流体」と呼ばれる状態になります。

二酸化炭素の場合、
・臨界温度:31.1℃
・臨界圧力:7.38MPa(約73気圧)

この条件を超えるとCO₂は超臨界状態となり、
・気体のような高い浸透性
・液体のような高い溶解力
を併せ持つ流体になります。

この性質により、植物内部に浸透し、熱をほとんど加えずに成分を抽出できます。

超臨界炭酸ガス抽出の原理

超臨界CO₂は植物内部に浸透し、芳香成分や脂溶性成分を溶解します。

その後、圧力を下げるとCO₂は気体に戻り、加熱することなく完全に分離されます。

そのため、
・溶剤残留がない
・熱による成分変性が少ない
・ワックスや樹脂などの成分量を調整できる
という特徴があります。

超臨界流体抽出の工程

① CO₂を超臨界状態にする
二酸化炭素に高圧・適温(31.1℃以上、7.38MPa以上)をかけて超臨界状態を作ります。

② 抽出釜で成分を抽出
超臨界CO₂を植物原料に通し、芳香成分や脂溶性成分を溶解させます。
この際、圧力や温度を調整することで抽出成分を選択的に制御できます。

③ 分離槽で回収
圧力を下げるとCO₂は気体に戻り、抽出物のみが残ります。
CO₂は完全に除去されるため、溶剤残留の心配はありません。

こうして得られた抽出物が「CO₂エキストラクト」と呼ばれます。

 

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超臨界抽出物(CO₂エキストラクト)

この方法で得られる抽出物は一般的に「エキストラクト」と呼ばれます。
エキストラクトは、超臨界二酸化炭素抽出によって得られる天然香料であり、水蒸気蒸留や溶剤抽出とは異なり、熱変性や溶剤残留のリスクが少ないという特徴があります。そのため、植物本来に近いバランスの香気成分を保持しやすい抽出物とされています。

特に以下のような特徴・利点があります。

・熱をほとんどかけないため、熱に弱い成分も保持できる
・有機溶剤を使用しないため、溶剤残留の心配がない
・ワックスや色素などの成分量を圧力条件により調整できる
・水蒸気蒸留では得られない重い成分や不揮発性成分も含めて抽出できる
・植物に近い自然な香調を再現しやすく、香りの再現性が高い

また、超臨界CO₂抽出では条件設定(温度・圧力)により抽出成分を制御できるため、目的に応じて香気バランスを調整できるという特徴もあります。

そのためエキストラクトは、香水原料、アロマ製品、食品香料、医薬品原料など幅広い分野で利用されており、「最もナチュラルな抽出法の一つ」として評価されることもあります。

CO₂エキストラクトと精油の違い

● 抽出方法の違い
精油は主に水蒸気蒸留法や圧搾法で抽出されます。
一方、CO₂エキストラクトは超臨界状態の二酸化炭素を用いて抽出されます。
この違いにより、抽出される成分構成が大きく変わります。

● 含まれる成分の違い
精油は揮発性成分が中心で、比較的軽い香気成分が主体です。
CO₂エキストラクトは、揮発性成分に加えて、重い分子成分、不揮発性成分、樹脂成分なども含まれる場合があります。
そのため、CO₂エキストラクトの方が「植物そのものに近い香り」と感じられることがあります。

● 香りの違い
精油は透明感があり、軽やかで拡散性の高い香りが特徴です。
CO₂エキストラクトは、より濃厚で深みがあり、植物の生感に近い香りを持つ傾向があります。

例えばジンジャーでは、
・水蒸気蒸留精油:シャープで軽い香り
・CO₂エキストラクト:生姜そのものに近い温かみのある香り
という違いが現れます。

● 粘度・色の違い
精油はさらっとした液体で透明〜淡色のものが多く見られます。
一方、CO₂エキストラクトは重い成分を含むため、粘度が高く、濃い色になることがあります。

● 用途の違い
精油はアロマテラピー、ディフューザー、化粧品、マッサージなど幅広く利用されています。

CO₂エキストラクトは、
・高級香水
・天然香料
・食品香料
・植物エキス原料
など、より香りの再現性を重視する分野で利用されることが多くなっています。

CO₂エキストラクトは「精油」なのか?

CO₂エキストラクトは植物由来の天然芳香物質ですが、一般的な意味での「精油」とは区別される場合があります。
これは、水蒸気蒸留による精油とは成分構成が異なり、揮発性成分以外も含まれるためです。
ただし、アロマ業界では広義の天然芳香抽出物として精油と同様に扱われることもあります。

超臨界流体抽出法のメリット、デメリット

◎ メリット
・低温(約31℃前後)で抽出できるため熱劣化が少ない
・溶剤残留の心配がない
・成分選択性が高く、目的成分を抽出しやすい
・水蒸気蒸留では得られない成分も抽出できる
・食品・化粧品など幅広い用途に利用できる
・ワックス分が少ない、または制御しやすいため、香りがクリアで安定しやすい

△ デメリット
・高圧設備が必要でコストが高い
・設備投資・運用コストが大きい
・一度に大量生産するのが難しい
・抽出条件の調整に専門的技術が必要
・一般的な水蒸気蒸留精油と比べて価格が高くなる傾向がある
・高圧設備が必要なため、製造しているメーカーが限られる

超臨界流体抽出法の代表的な応用分野

超臨界流体抽出法は精油抽出だけでなく、以下のようなさまざまな分野でも利用されています。

・コーヒー豆からのカフェイン除去(デカフェ処理)
・医薬品原料の抽出
・食品香料の抽出
・生薬・ハーブエキスの抽出
・高級香水原料の抽出

特にデカフェコーヒーでは、超臨界流体抽出は風味や香りを損ないにくい方法として広く利用されています。

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参考図書
・アロマテラピー精油事典 発行:成美堂出版
・アロマテラピーの教科書 発行:㈱新星出版社
・アロマセラピーの全てがわかる本 発行:㈱ソーテック社
・精油の化学 発行:フレグランスジャーナル社
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)
 
>>アロマ・精油・エッセンシャルオイルの禁忌表・禁忌事項・禁忌一覧

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