アボカド油(アボカドオイル)は、アボカドの果肉から抽出される植物油です。キャリアオイル(植物油)の中でも粘度が高く、しっとりとした使用感が特徴で、アロマトリートメントやスキンケアに活用されています。
アボカドは「森のバター」と呼ばれるほど脂質を豊富に含む果実として知られており、その果肉から得られるアボカド油にもオレイン酸やビタミン類などの成分が含まれています。未精製タイプは深い緑色と独特の香りを持ち、精製タイプは比較的使いやすいことから、用途に応じて選ばれています。
ここでは、アボカドという植物の基本情報から、アボカド油の特徴や成分、キャリアオイルとしての使い方まで詳しく解説します。
アボカドとは?
アボカドはクスノキ科の常緑高木で、中央アメリカやメキシコを原産とする果樹です。樹高は7~25mほどに成長し、現在では世界各地で栽培されています。
アボカド基本情報
| 英語名 | Avocado |
| 和名 | ワニナシ(鰐梨) |
| 学名 | Persea americana(ペルセア・アメリカーナ) |
| 科名 | クスノキ科(Lauraceae) |
| 属名 | ワニナシ属(Persea) |
| 原産地 | 中央アメリカ、メキシコ |
| 植物分類 | 常緑高木 |

「森のバター」と呼ばれる理由
アボカドは、果肉に豊富な脂質を含むことから「森のバター」と呼ばれています。一般的な果物と比べて脂質含有量が高く、果肉の約20%が脂質で構成されているといわれています。
また、ビタミンA・B群・Eをはじめとするビタミン類やミネラルを含む栄養価の高い果実として知られ、世界各地で食用として親しまれています。
この豊富な脂質や栄養成分は、果肉から抽出されるアボカド油にも受け継がれています。アボカド油にはオレイン酸を中心とした脂肪酸やビタミン類が含まれており、植物油の中でも濃厚でしっとりとした使用感が特徴です。そのため、キャリアオイルとして利用される植物油の中でも、成分の豊富さから注目されるオイルの一つとされています。
※「最も栄養価の高いキャリアオイル」という表現は比較根拠が不明確なため、記事では「栄養価の高い植物油として知られています」「成分の豊富さから注目されています」程度にしておくと、客観性や信頼性の面でより適切です。
和名「ワニナシ」の由来
アボカドの和名は「ワニナシ(鰐梨)」です。これは、果実の表面がゴツゴツとしてワニの皮膚を連想させることと、果実の形がナシ(梨)に似ていることに由来するといわれています。
アボカドの果皮は品種によって異なりますが、深い緑色から黒褐色を帯びるものもあり、特にハス種(Hass)は表面の凹凸が目立つことで知られています。その特徴的な見た目から、「ワニ」と「梨」を組み合わせた「ワニナシ」という和名が付けられました。
アボカドと美容・スキンケアの歴史
アボカドはメキシコや中央アメリカを原産とし、古くから現地の人々の食生活に取り入れられてきた果実です。スペイン人探検家によってその存在がヨーロッパへ伝えられ、その後、世界各地へ広まりました。18世紀頃にはアメリカでも広く食用として利用されるようになったとされています。
アボカドの果肉や果肉から採れるオイルは、食用だけでなく、伝統的な暮らしの中でスキンケアにも活用されてきました。特に温暖で乾燥しやすい地域では、肌になじみやすい植物油として利用されていたといわれています。
また、アボカドは脂質やビタミン類を含む栄養価の高い果実であることから、その果肉から抽出されるアボカド油も美容用植物油として注目されるようになりました。現在では、しっとりとした使用感を持つキャリアオイルの一つとして、アロマテラピーやスキンケアの分野で広く利用されています。

アボカド油とは?
アボカド油は、アボカドの果肉から抽出される植物油です。種子ではなく果肉から採油される点が特徴です。
アボカド油の基本情報
| 英語名 | Avocado Oil |
| 和名 | アボカド油。原料植物であるアボカドの和名は「ワニナシ(鰐梨)」です。その果肉から抽出された植物油がアボカド油です。 |
| 学名 | Persea americana(ペルセア・アメリカーナ) |
| 異名 | Persea gratissima(ペルセア・グラティシマ) |
| 抽出部位 | 果肉 |
| 抽出方法 | 低温圧搾法(コールドプレス)、圧搾法など |
| 主な生産地 | メキシコ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イスラエル、スペイン、南アメリカ諸国 |
| 色 | 淡黄色~濃緑色 |
| 香り | ほぼ無臭~植物特有の香り |
| 粘度 | 高い |
| 使用感 | 重めでしっとり |
| 開封後の使用目安 | 約4~6か月 |
アボカド油の主成分と特徴
■ オレイン酸(約70〜75%)
アボカド油の大部分を占めるのが、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸です。植物油の中でも含有量が高く、しっとりとした使用感が特徴です。
肌へのなじみがよく、油膜を形成することで水分の蒸発を防ぎ、乾燥しやすい肌を保護するエモリエント効果があるとされています。また、皮膚を柔らかく整える目的でスキンケアに利用されることが多い成分です。
■ リノール酸(約10〜15%)
リノール酸は必須脂肪酸(オメガ6系脂肪酸)の一つで、肌のバリア機能を支える成分として知られています。
皮膚の水分バランスを保つ働きがあり、健やかな肌状態を維持するために重要な脂肪酸とされています。
■ パルミトレイン酸(約5〜10%)
パルミトレイン酸は、皮脂にも含まれる脂肪酸の一種で、「皮脂に近い組成を持つ成分」として知られています。
年齢とともに減少するといわれており、特に加齢に伴う皮脂バランスの変化に関係する成分として注目されています。スキンケアでは、肌の柔軟性を保つ植物油成分の一つとして扱われます。
■ ビタミン類(A・B群・E)
アボカド油にはビタミン類も含まれています。
ビタミンA(β-カロテン):肌を健やかに保ち、キメを整える働きがあるとされています
ビタミンB群:皮膚をすこやかに保つサポート成分として知られています
ビタミンE(トコフェロール):酸化に関わる成分で、オイル自体の品質維持にも関係します
これらの成分が複合的に含まれることで、しっとりとした植物油としての特徴が形成されています。
■ レシチン(リン脂質)
レシチンはリン脂質の一種で、水と油をなじませる性質(乳化性)を持つ成分です。
肌へのなじみをサポートし、植物油の使用感をなめらかにする働きがあるとされています。
■ 植物ステロール(フィトステロール)
植物由来のステロール成分で、アボカド油にも含まれています。
食品として摂取した場合はコレステロールとの関連が知られていますが、スキンケア分野では、肌をすこやかに保つ成分として扱われることが多いです。植物油の構成成分として、バリア機能をサポートする役割が注目されています。
アボカド油が向いている肌タイプ・使用シーン
アボカド油は粘度が高く、しっとりとした使用感を持つ植物油のため、スキンケアやアロマトリートメントにおいて、比較的乾燥しやすい肌質や季節的なケアに用いられることが多いオイルです。
特に以下のような使用シーンで選ばれる傾向があります。
・乾燥が気になる時期のスキンケア
・かかと・ひじ・ひざなどのボディケア
・しっとりとした使用感を好む場合
・年齢に応じたスキンケアオイルとしての使用
・角質が気になりやすい部位の保湿ケア
また、アボカド油は重めの質感を持つため、単独よりも他の植物油とブレンドして使用されることも多く、使用感を調整しながら取り入れられています。
アボカド油の使い方(キャリアオイルとして)
■ 単独使用
アボカド油は粘度が高く、濃厚な使用感を持つ植物油です。そのため単独で使用する場合は、少量を手に取り、気になる部分になじませる方法が一般的です。
広い範囲に多量に使用すると重さやべたつきを感じることがあるため、使用量を調整しながら取り入れることがポイントです。
アボカド油は特に乾燥しやすい部位などのパーツケアに用いられることが多く、肌をしっとりと保ちたいときの植物油として活用されています。
■ 他の植物油とのブレンド
アボカド油は重めの質感と独特の香りがあるため、軽い使用感のキャリアオイルとブレンドして使われることが多い植物油です。
ブレンド比率の目安は、全体の10〜30%程度に抑える方法が一般的です。
相性の良い植物油
・マカダミアナッツ油
・ホホバ油
・アルガン油
・アプリコットカーネル油
・ピーチカーネル油
・ローズヒップ油
各オイルとの組み合わせ例
・マカダミアナッツ油
肌なじみがよく、使用感をなめらかに整えるため、ボディケアブレンドとしてよく用いられます。
・ホホバ油
軽い使用感でバランスが取りやすく、アボカド油の重さを調整するベースオイルとして適しています。
・アルガン油
ビタミンEを含む植物油として知られ、しっとりとした美容オイルブレンドに利用されます。
・アプリコットカーネル油・ピーチカーネル油
軽やかな質感で、フェイシャル用ブレンドとして使いやすい植物油です。
・ローズヒップ油
フェイシャルケア用のブレンドに取り入れられることがあり、他の植物油と組み合わせて使用されます。
■ ブレンド比率の目安
一般的なトリートメントでは、アボカド油を全体の10〜25%程度に抑え、軽い植物油をベースにする方法がよく用いられます。
重めの質感を活かしつつ、使用感を調整することで、扱いやすいブレンドになります。
■ 精油の希釈に使う場合
アボカド油は精油のキャリアオイルとしても使用できますが、単独ではやや重い使用感になるため、ホホバ油やマカダミアナッツ油などの軽い植物油と組み合わせて使われることが一般的です。
このようなブレンドベースに精油を加えることで、フェイシャルやボディのアロマトリートメントに適したオイルとして使用できます。
■ フェイシャル・ボディでの使用
ブレンド比率を調整することで、顔・体のどちらのトリートメントにも利用されます。
使用部位や目的に応じて、軽さや重さを調整しながら使うことができます。
アボカド油の選び方
● 精製・未精製の違い
アボカド油には主に「精製(リファインド)」と「未精製(アンリファインド)」があります。用途や好みに応じて選ぶことが大切です。
・精製タイプ
色や香りがほとんど取り除かれており、比較的軽い使用感が特徴です。香りが気になる方や、他のオイル・精油と組み合わせて使いたい場合に適しています。
・未精製タイプ
アボカド由来の成分や色、香りが残っているのが特徴です。より自然な風合いを好む場合や、植物油本来の質感を活かしたい場合に選ばれます。
● 色の濃さ(クロロフィル量)
アボカド油の色は、精製度や原料の状態によって異なります。特に未精製のアボカド油は、果肉由来の色素であるクロロフィル(葉緑素)を含むため、濃い緑色~深緑色を帯びることがあります。
一般的に、未精製に近いほど色が濃くなる傾向がありますが、色の濃さそのものが品質の優劣を示すものではありません。同じ未精製でも、品種や抽出条件によって色調には幅があります。
そのため、色は「精製度や原料由来成分の残存状態を示す目安の一つ」として参考にされます。
● 香りの強さ
未精製のアボカド油は、植物由来の独特な香りを持つ場合があります。青臭さや濃い植物臭を感じることもあり、香りの強さは製品によって差があります。
香りが気になる場合は、精製タイプを選ぶか、他のキャリアオイルとブレンドして使用する方法があります。
● ハス種(Hass)の特徴
アボカドの中でも代表的な品種であるハス種(Hass)由来のオイルは、色が濃くクロロフィルを多く含む傾向があります。
そのため未精製の場合は、色味や香りがしっかりと残ることがあります。使用感を調整したい場合は、ホホバ油などの軽い植物油とブレンドして使われることがあります。
● コールドプレス(低温圧搾)について
コールドプレス(低温圧搾)とは、アボカドの果肉を加熱せず、圧力によって油分を抽出する製法のことです。熱による変質を抑えながら抽出できる方法として知られており、植物油の製法として一般的に用いられています。
ただし、実際にアボカド油を選ぶ際には「コールドプレスかどうか」だけで判断するのではなく、以下の点をあわせて確認することが重要です。
■ 選び方のポイント
・スキンケア中心の場合 → コールドプレス・未精製または精製を用途で選ぶ
理由:未精製は色や香りなど植物由来の特徴が残っており、精製は使用感が軽く香りが少ないため、好みや使用シーンに合わせて選びやすいためです。
・香りや使用感を軽くしたい場合 → 精製タイプ
理由:精製工程により色素や香り成分が除去されるため、他の植物油や精油と組み合わせやすくなります。
・植物由来の質感を重視したい場合 → 未精製+コールドプレス
理由:果肉由来の成分や色・香りが比較的残りやすく、アボカド油本来の特徴を感じやすいためです。
保存方法と使用期限
アボカド油の使用期限は、一般的に開封後4〜6ヶ月程度が目安とされています。未開封の状態では比較的安定していますが、開封後は空気に触れることで徐々に酸化が進むため、早めに使い切ることが推奨されます。
● 保存方法(基本)
アボカド油は以下の環境で保存することが適しています。
・直射日光を避ける
・高温多湿を避ける
・冷暗所(戸棚や引き出しなど)で保管する
特に浴室の近くなど温度や湿度が変化しやすい場所は避けるとよいでしょう。
● 温度変化による状態の変化
冬場など室温が低い環境では、オイルが白く濁ったり固まったりすることがありますが、これは自然な物理変化であり、品質に問題があるわけではありません。
常温に戻すか、ボトルを手で温めることで液体の状態に戻ります。
● 酸化と使用の目安
アボカド油はオレイン酸を多く含むため比較的酸化しにくい部類の植物油とされていますが、リノール酸などの不飽和脂肪酸も含まれているため、時間の経過とともに品質は少しずつ変化します。
そのため、開封後はできるだけ新鮮なうちに使用することが大切です。
● 保存のコツ
品質をできるだけ保つためには、以下のような工夫が役立ちます。
・大容量を購入した場合は小分けして使用する
・遮光瓶に移し替えて保管する
・開封回数を減らし、空気に触れる機会を少なくする
こうした工夫により、より安定した状態で使用しやすくなります。
アボカド油を使う際の注意点
● アレルギーについて
アボカドはナッツ類ではなく果実(果肉)から採れる植物油のため、一般的なナッツ(アーモンドやマカダミアナッツなど)とは分類が異なります。そのため、ナッツアレルギーがある方でも使用できる場合があります。
ただし、すべての方に問題がないわけではなく、まれにアボカド自体に反応するケースや、ラテックス(天然ゴム)アレルギーを持つ方がアボカド・キウイ・バナナなどに交差反応を示すことがあるとされています。
そのため、初めて使用する場合は、二の腕の内側などでパッチテストを行ってから使用することが推奨されます。
● 酸化と取り扱いについて
アボカド油は空気や光、熱の影響を受けて徐々に性質が変化することがあります。酸化したオイルは使用感や香りに変化が出る場合があるため、保管方法には注意が必要です。
使用後はボトルの口を清潔に保ち、キャップをしっかり閉めることが基本です。開封後はできるだけ早めに使い切ることで、安定した状態で使用しやすくなります。
● 未精製オイルの香りについて
未精製のアボカド油は植物由来の香りが比較的しっかり残っているため、使用感の好みが分かれることがあります。
また、ブレンドに使用する精油の香りに影響する場合もあるため、香りを重視する場合は精製タイプを選ぶか、ブレンド比率を調整する方法があります。
一般的には、全体の10〜30%程度を目安にブレンドすることで、香りと使用感のバランスが取りやすくなります。
● 色移りについて
未精製のアボカド油は濃い緑色を帯びているため、使用量が多い場合や十分になじんでいない場合、衣類やタオルに色移りする可能性があります。
特に白い布製品などを使用する際は注意が必要です。気になる場合は、精製タイプを選ぶことでこの点は軽減されます。
参考図書
・アロマテラピー精油事典 発行:成美堂出版
・アロマテラピーの教科書 発行:㈱新星出版社
・アロマセラピーの全てがわかる本 発行:㈱ソーテック社
・精油の化学 発行:フレグランスジャーナル社
