精油の作り方抽出法.水蒸気蒸留法とは?油脂吸着法(アンフルラージュ/冷浸法・温浸法)についても

アロマ精油・エッセンシャルオイル

精油(エッセンシャルオイル)は、アロマテラピーをはじめ、化粧品、食品、香料産業など幅広い分野で利用されています。その香りや機能性を最大限に活かすためには、植物に含まれる芳香成分を効率よく、そして適切な方法で抽出することが欠かせません。精油は単なる「植物の香り」ではなく、植物が持つ芳香成分を高濃度に凝縮したものであり、どの抽出法を用いるかによって香りの質や成分構成が大きく変化します。

植物の芳香成分は、「油胞」「油道」「腺毛」などの特殊な組織に蓄えられ、果皮・葉・花・根などの部位に存在しています。これらの部位に含まれる芳香成分は一般的に1〜3%ほどと非常に少なく、このわずかな成分を取り出したものが精油です。そのため、植物の種類や部位、熱への耐性、含有量に応じて最適な抽出技術が選ばれます。

精油の抽出法として最も広く利用されているのが水蒸気蒸留法で、多くの植物に適用でき、安定した品質の精油を得られることから現在でも主流の製法です。一方、ジャスミンやローズのように熱に弱く、芳香成分の含有量が極めて少ない花からは、揮発性有機溶剤抽出法が用いられ、コンクリートやアブソリュートといった形で香料が得られます。

柑橘類の果皮に多く含まれる芳香成分は熱に弱いため、圧搾法(コールドプレス)によって効率よく抽出されます。また、かつては動物性脂肪に花の香りを移すアンフルラージュ(冷浸法)も利用されていましたが、現在では工業的にはほとんど行われていません。

近年注目されているのが、超臨界流体抽出法(超臨界CO₂抽出)です。低温で抽出できるため熱による成分変化が少なく、植物本来の香りに近い高品質な精油を得ることができます。ただし、設備コストが高く処理量も限られるため、得られる精油は希少で高価になります。

このように、精油の抽出法は植物の特性や目的に応じて使い分けられ、それぞれに長所と短所があります。どの抽出法がどのような植物に適しているのかを理解することは、質の高い精油を選ぶうえでも非常に重要です。

ここでは、精油づくりに用いられる代表的な抽出法である水蒸気蒸留法の特徴や仕組みをわかりやすく解説します。

 

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水蒸気蒸留法とは

精油の抽出技術の中で、最も長い歴史を持ち、現在でも中心的な役割を果たしているのが水蒸気蒸留法です。

植物が持つ芳香成分は、古代から人々の生活に利用されてきましたが、それらを純粋な形で取り出す技術が確立したのは中世以降のことです。アラビアの錬金術師たちが蒸留器を発展させたことで、植物の香りをより純粋な形で抽出することが可能となり、これが現代の精油産業の基礎となりました。

水蒸気蒸留法は、植物に含まれる揮発性成分を水蒸気とともに気化させ、冷却して分離するという、比較的シンプルな原理に基づいています。

しかし、その背後には蒸気圧や分子量といった物理化学的性質が関わっており、単純な技術のように見えて、実際には高度な知識と経験が必要とされます。

植物の種類によって蒸留条件が大きく異なるため、蒸留家は植物ごとの最適な温度・圧力・時間を見極めながら作業を行います。

水蒸気蒸留法の原理

植物に含まれる芳香成分は「エッセンス」と呼ばれる油状の揮発性物質で、単独では高い沸点を持つものも多くあります。

しかし、これらの成分は水蒸気と共存することで共沸し、100℃以下の温度で揮発するようになります。この性質を利用することで、植物を過度な高温にさらすことなく、熱に弱い成分を損なわずに抽出することができます。

蒸留釜に植物を入れ、下部から水蒸気を送り込むと、植物細胞が熱と圧力によって破壊され、内部に蓄えられていた芳香成分が水蒸気とともに気化します。気化した混合蒸気は冷却器で冷やされ、液体に戻ると精油と芳香蒸留水(ハイドロレート)に分離します。精油は水に溶けないため、比重差によって上層に浮き上がり、分離器で回収されます。

蒸留中に100℃前後の熱が加わることで、植物中には存在しない新しい化合物が生成されることがあります。カモミールのアズレンやコモンセージのツヨンなどはその代表例で、蒸留によって初めて生まれる成分です。

水蒸気蒸留が可能になる物理化学的理由

水蒸気蒸留が成り立つ理由は、水と精油成分の蒸気圧と分子量の関係にあります。

精油成分は水と混ざり合わないにもかかわらず、水蒸気とともに揮発します。これは、両者の蒸気圧が加算されることで、混合物全体の沸点が低下するためです。

・精油成分の蒸気圧が高いほど蒸留しやすく、必要な水の量は少なくなります。
・分子量が大きい成分は揮発しにくく、より多くの水蒸気が必要になります。

ベチバーのように分子量が大きく揮発しにくい精油は、減圧下で蒸留することで沸点を下げ、抽出を容易にすることがあります。

蒸留設備と構造

水蒸気蒸留に使用される設備は、主に「蒸留釜」「冷却器」「油水分離器」の三つで構成されます。

蒸留釜には植物を入れ、底部に金網を敷いて蒸気が均一に行き渡るようにします。植物は適度に踏み固めますが、固すぎると蒸気が通らず、柔らかすぎると植物量が減って収量が下がります。

冷却器は蒸気を液体に戻す装置で、工場では熱交換器が使われますが、伝統的な蒸留所では川の水を利用して冷却する方法も残っています。

油水分離器は、冷却後の液体から精油を分離するための装置で、精油の比重によって構造が異なります。多くの精油は水より軽く上層に浮きますが、クローブのように水より重い精油は下層に沈みます。

蒸留の実際

蒸留前には植物を数日間乾燥させることが一般的です。乾燥は、青臭さの原因となる成分を揮散させ、精油の純度を高めるとともに、蒸留効率を向上させます。

蒸留方法には以下の種類があります。

  • ウォーターディスティレーション(水蒸留法):
    植物原料を水に直接浸して加熱し、沸騰させて蒸留する方法です。植物全体に熱が均一に伝わりやすく、効率よく精油を抽出できます。
  • コーホベーション:
    水蒸留法の一種で、蒸留後の水を再び蒸留釜に戻し、循環させながら蒸留を続ける方法です。水溶性成分を再抽出できるため、精油収率を高める効果があります。
  • ウォータースチームディスティレーション:
    最も一般的な方法で、蒸留釜の下部で発生した蒸気を植物層に通して蒸留します。比較的簡単な設備で実施できるため、世界各地で利用されています。
  • スチームディスティレーション:
    外部ボイラーで発生させた蒸気を蒸留釜へ直接送り込む方法です。ショウガやベチバーなど、長時間蒸留が必要な原料に適しています。過熱蒸気を利用することで原料の過湿を防ぎ、特有の雑臭を抑えることができます。

蒸留条件と品質

水蒸気蒸留は単純な原理に基づいていますが、実際には高度な技術が必要です。植物ごとに最適な温度・圧力・蒸留時間が異なり、条件がわずかに変わるだけで精油の香りや成分構成が大きく変化します。

蒸留後の精油は、冷暗所で一定期間熟成させることで香りが安定し、より調和の取れた香調へと変化します。熟成期間は植物によって異なり、柑橘系は短期間で安定しますが、ウッド系は数ヶ月を要することがあります。

水蒸気蒸留法のメリット、デメリット

◎ メリット
・最も一般的で確立された抽出法
・比較的純度の高い精油が得られる
・芳香蒸留水も副産物として得られる
・設備が比較的簡単で大規模生産に向く
・低温域で蒸留できるため成分劣化を抑えられる

△ デメリット
・熱や水に弱い芳香成分は変質することがある
・植物本来の香りと異なる香調になる場合がある
・蒸留条件によって品質差が大きい
・柑橘類など一部植物には適さない

このため、水蒸気蒸留法は多くの植物に適した優れた方法である一方、繊細な花の香りや熱に弱い成分を持つ植物には、溶剤抽出法や圧搾法など別の抽出法が選ばれることもあります。

 

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油脂吸着法(アンフルラージュ/冷浸法・温浸法)

油脂吸着法は、動物性または植物性の油脂に花の芳香成分を吸着させて香りを抽出する、伝統的な香料製造法です。主にジャスミンやチュベローズなど、非常に繊細で熱に弱い花の香りを取り出す目的で、かつてフランスを中心に用いられていました。

この方法には「アンフルラージュ(冷浸法)」と「マセラシオン(温浸法)」の2種類があります。

● アンフルラージュ(冷浸法)

ガラス板などに動物性脂肪(主にラードや精製脂)を塗り、その上に花を置いて芳香成分をゆっくりと油脂に移す方法です。花を一定時間ごとに交換しながら香りを吸着させていきます。低温で行われるため、熱による香りの変質が少ないのが特徴です。

● マセラシオン(温浸法)

脂肪を軽く加熱し、花を浸して芳香成分を抽出する方法です。冷浸法よりも効率的に香りを移すことができますが、加熱による香りの変化が起こる場合があります。

吸着後の油脂は「ポマード」と呼ばれ、さらにアルコールで芳香成分を抽出することで「アブソリュート」に近い香料が得られます。

現在では、溶剤抽出法や超臨界CO₂抽出法の発達により、アンフルラージュは商業的にはほとんど使用されていませんが、歴史的な香料製造技術として知られています。

参考図書
・アロマテラピー精油事典 発行:成美堂出版
・アロマテラピーの教科書 発行:㈱新星出版社
・アロマセラピーの全てがわかる本 発行:㈱ソーテック社
・精油の化学 発行:フレグランスジャーナル社
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)
 
>>アロマ・精油・エッセンシャルオイルの禁忌表・禁忌事項・禁忌一覧

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