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精油のオークモスは、皮膚刺激やアレルギーなど使用上の注意点が多く、アロマセラピーとして活用法が多い精油ではなく、どちらかというと香水の香料としてのほうがメジャーな存在で、香水の世界ではオークモスとベルガモット(ミカン科ミカン属の常緑低木樹)を調合した香りを「シプレー調」と呼び、ユニセックスな香りの香水には欠かせない定番の調合の一つとなっています。
しかし、苔の匂いという他の精油にはあまりない独特の香りを持っており、そのため精油のブレンドの幅を広げたい時や、香水を作って楽しみたいときに役立つ精油です。
あえてアロマセラピーで使うなら、香水で使われているような、香料としての特徴を活かした使い方をする、という感じです。
ここではオークモスとはどのような植物か?オークモスの精油の香りや特徴、使い方・活用法や、使用する時の注意点などについて紹介します。
オークモスってどんな植物?
オークモスは地衣類、または地衣植物という菌類と藻類の共生体の一種で、いわゆる「苔」と呼ばれるものの一つで、地面などに単独で育つのではなく他の樹木に付着して育ちます。
主にヨーロッパ地域に分布し、日本では北海道にのみ分布しています。
英名はOak Moss、日本ではツノマタゴケとも呼ばれます。
オーク(Oak)は日本ではカシノキと訳される場合があるため、Oak(カシノキ)のMoss(苔)という名前から、カシノキのみに付着して育つ苔であると誤解されることがありますが、正しくはブナ科ナラ属の総称であり、ブナ科ナラ属の樹木に付着して育つ地衣類です。
オークモスの使い方・活用法
オークモスは香水に使う香料や香りを長持ちさせるための保留剤として活用されています。
保留剤とは、香料を調合する際に香料の揮発性を落とすことによって、香りの持ちを良くするもののことを言います。
また、オークモスの香りを活用した代表的な香水の調合に「シプレー調」があります。
シプレー調の香りは甘さが少なく、ユニセックスな印象、大人っぽい印象を持つ香りであるため、女性用香水だけではなく男性用香水にも用いられています。
「シプレー調」とはオークモスと柑橘系の香りのベルガモットを調合した香りの呼び名で、香水の香りの分類の1つになっています(シプレー調は、さらに樹脂系の香りアンバーを加える、とする説もあります。)。
さらに、このシプレー調をベースとして様々な香水が作られており、代表的なものにクリスチャン・ディオールの「Miss Dior」、ゲランの「MITSOUKO(ミツコ)」などがあります。
日本ではお香、お線香としても活用され、オークモスの苔のような匂いは湿度の高い日本の庭園や苔庭などを連想させるとされ、和室に似合うと好まれています。
近年では、気軽にルームフレグランスとして活用できるお香としてテレビやSNSで話題となった「hibi」という製品にもオークモスの香りが使われています。
オークモス 精油の特徴
オークモス精油の抽出方法
オークモスの全草から有機溶剤抽出法で精油を抽出します。非常に粘性が高いため、あらかじめ5%程度に希釈された状態で販売されています。色は濃い緑色~茶色です。
オークモスはどんな香り?香りの特徴
オークモスは、湿り気のある土や苔のような複雑な匂いのする精油で、その香りは香水ではモッシーと表現されます。
土や苔のような香りは好き嫌いが分かれやすく、単独ではいい香りとは言い難いかもしれませんが、ブレンドすると主張しすぎることなく他の香りと馴染み、香り全体に深みを持たせます。
オークモスの精油の安全性
オークモスに含有されているアトラノール、クロロアトラノールはアレルギー誘発物質と指摘されている成分で、肌につける使用方法だけではなく、香料としても高濃度で使用しないよう推奨されています。
また、これらの成分にアレルギー反応を起こした場合、交差反応を引き起こす可能性があるという説もあります。アレルギーの交差反応とは、特定の物質にアレルギー反応が起きた時、似た構造を持つ別の物質に対してもアレルギー反応を起こしてしまうことを言います。
オークモスでアレルギー反応を起こした時に、どの物質に対してアレルギーを起こしやすくなるのかははっきりしていませんが、複数のアレルギー反応を誘発してしまう可能性が指摘されています。
そのため、オークモス使用の際は、使用上の注意事項を必ず守り、少しでも体調に違和感がある場合は使用を中止してください。
オークモスのデータ
英名 | Oak Moss |
学名 | Evernia prunastri |
科名 | サオルガセ科 |
産地 | フランス、ハンガリー、モロッコなど |
精油の抽出部位 | 全草 |
ノート * | ベース |
精油の主な成分 | アトラノール、クロロアトラノール、エベルニルなど |
ブレンド相性 | ベルガモットなどの柑橘系、シダーウッドなど樹木の香りと相性が良いです。 |
禁忌・注意 | 妊娠中、授乳中の方は使用を控えてください。 小児、乳幼児への使用は控えてください。 肌に塗布する使い方は控えてください。 1%以下に希釈して使用してください。 アレルギー体質の方は使用しないでください。 |
*ノートは精油の揮発する時間や香りの持続する時間を表すものです。香り立ちが最も早いが持続時間が短いトップノート、香り立ちはゆっくりだが長い時間香り続けるベースノート、ちょうど中間の性質を持つミドルノートの3つに分類されます。
オークモスの活用法
オークモス単体でも活用できますが、他の精油を加えることで香りが豊かになり、精油をより効果的に活用できます。ブレンドにおすすめの精油も併せて紹介していますので、基本のレシピに足して使ってください。
なおレシピを活用する際は、オークモスの使用時の注意事項、ブレンドとして加える精油の使用時の注意事項のいずれかに該当する項目がないかどうか確認してください。
またオークモスは、色の濃い精油ですので、衣類などに付着するとシミになる場合がありますので注意してください。
精油の成分に対する体の反応には個人差があります。気分不快を感じたり、肌に合わないと感じた場合は使用を中止してください。
芳香浴
精神疲労を感じる時に、コットンに垂らすなどして芳香成分を拡散させます。使用時、体調に違和感を感じた場合は使用を中止し、室内を換気してください。
【レシピ】
オークモス・・・1滴
コットンに精油を垂らす、もしくはアロマデフューザーを使って香りを拡散させます。アロマデフューザーを使う場合はそれぞれの取り扱い説明書の内容に沿ってご活用ください。
【おすすめのブレンド】
ラベンダー・・・2滴
ラベンダーは通経作用がありますので、妊娠初期(妊娠四か月目くらい)の方は使用を控えてください。
オークモスの禁忌・注意点
・妊娠中、授乳中の方や小児、乳幼児への使用
アトラノールなどアルデヒド類という皮膚刺激を与える成分が複数含まれています。また、アトラノール、クロロアトラノールはアレルギーを誘発する可能性がありますので安全のため妊娠中、授乳中の方、体格の小さな子供への使用は控えてください。
・肌への使用
アレルギー誘発物質が含有されていますので、肌に塗布する使い方は控えてください。
・高濃度での使用
アレルギー誘発物質が含まれていますので、香料として使用する際も1%以下に希釈し、高濃度での使用は控えてください。